【構造的シフト論 】なぜ日本の政策は機能しないのか?

―「予算管理の柔軟性確保」から「社会構造の再設計」へ進むべき理由


はじめに|問題は「やる気」よりも「構造」

日本の政策が次々に機能不全を起こしている原因は、個々の政治家や政党の問題だけではない。
それ以前に、制度と予算の構造が“機能するように設計されていない”ことこそが問題の本質だ。

中でも深刻なのは、

「予算が動かせない」=「政策が動かせない」
という国家運営上の致命的な硬直性。

この背景には、“表の予算”しか国民に見えない仕組みがある。

そう、「特別会計」という“裏の予算構造”こそが最大のボトルネックだ。


第1章|日本の政策が機能しない本質構造

1. 表と裏で乖離する「二重予算」構造

日本の国家予算は以下の2層で構成されている:

  • 一般会計:国会で毎年審議され、マスメディアが報道する“見える予算”。約110兆円(2025年度)
  • 特別会計:本来の国家運営に直結する“裏の予算”。総額は一般会計の数倍。中には【繰り入れ控除】され“使途が不明確な資金”が多数存在

この特別会計での“見えない予算化”が、政策の透明性を奪っている(利権の温床)。


2. 特別会計が引き起こす“予算の形骸化”

  • 特別会計のほとんどが“義務的支出”として自動化されている
  • 国会審議をすり抜けて、省庁ごとの“財布”として温存されている
  • 「使われないカネ」や「余らせて再計上されるカネ」が山積
  • 真に必要な政策変更に予算が割けない「予算の空洞化」

3. 特会と利権構造の癒着

  • 各省庁が自分の利権確保のために“特会を手放さない”構造
  • 特会を管理することで、人事・天下り先・補助金ネットワークが維持される
  • これは“制度疲労”ではなく制度温存型の利権構造とすら言える

第2章|「再設計」という逆転の選択肢

予算が動かせないなら、制度そのものを変えればよい。

予算の“源”が変わらない限り、どれだけ理念を語ってもすべて「空回り」になる。

ゆえに必要なのは、

  • 特別会計の全面的な可視化(繰り入れ控除の見える化等)
  • 不要な特会の廃止と統合
  • 柔軟な政策予算への再振り分け

この再設計こそが、特別会計という「制度の死角」を乗り越える鍵である。


第3章|依存を助長せず、自由を保障する制度設計とは?

― 現実を踏まえた「段階的シフト」の方向性

制度は一夜にして変わらない。
だが、「方向性を明示し、戦略的に進めること」は今日からでも可能だ。

ここでは、現行制度の延長線上にありながら、依存を助長しない持続可能な社会構造に向かう“3つの方向性”を提示する。


方向性1:「生存コスト最小化」を前提とした制度構築

■ なぜ必要か?
現状、社会保障や現金給付の多くは、“高すぎる生存コスト”の穴埋めとして使われている。
だが、この「後追い支出」は永遠に続かない。

■ どう進めるか? 

【例】

  • 食料自給率やエネルギー自給率の最大化を目指す制度改善
  • 公営インフラの再国営化による料金見直し(例:水道・通信)
  • 地方移住支援とリモートワーク環境整備で都市集中による生活費圧縮
  • 民間企業の住宅費・食費補助への税制インセンティブ強化

→ まず「最低限の生活にかかるコスト」を構造的に下げることで、
給付依存を減らし、税と予算の自由度を徐々に高めていく。


方向性2:“自立支援型”への転換による保障の持続可能性

■ なぜ必要か?
現状の社会保障は“配分”に重点を置きすぎており、
「受け取った人がどう次の一歩を踏み出すか」が制度設計から抜けている。

■ どう進めるか? 

【例】

  • 給付に情報リテラシー教育・職業訓練をセットに(例:生活保護+ITリスキリング)
  • 副業・フリーランス支援の法整備と起業支援の簡素化
  • “ベーシックチャレンジ制度”:一定額支給と「挑戦レポート」の交換制

→ 「受け身型の給付」から、「動き出す支援」への段階的シフト。
持続可能性を守りつつ、自由と選択肢を増やす社会構造へ。


方向性3:制度自体の“進化可能性”を埋め込む仕組みへ

■ なぜ必要か?
どれだけ優れた制度も、時代とズレた時に修正不能なら意味がない。
今の日本には「制度そのものをアップデートする機構」が存在しない。

■ どう進めるか? 

【例】

  • 特別会計のKPI評価と“見える化”の法制化(省庁の抵抗に屈しない制度構築)
  • AIによる政策実行のシミュレーション制度の導入(予算がどこで滞るかを常時分析)
  • 政策評価委員会に第三者機関・市民代表の恒常的参加を義務づける

→ “完璧な制度”ではなく、“動ける制度”を前提とした国家運営へ。
これが政策の柔軟性と信頼性の鍵になる。


まとめ|「理想」ではなく「方向性」として捉えるべき

  • いきなり制度を180度変えるのは不可能
  • だが、方向性を定めて制度に“選択肢と出口”を埋め込むことは可能
  • その一歩が、「依存せず、自由に生きられる社会」を構築する現実的スタートになる


結論|日本は「予算構造そのもの」を作り直す時期に来ている

「予算がない」のではない。
「予算が“動かせない仕組み”が制度の中に埋め込まれている」のが現実だ。

国債発行の是非に先んじて、

  • 何に使われているのか不透明な予算
  • 自動で積み上がる支出構造
  • 統制不能な「裏財布」たる特別会計(繰り入れ控除)

これらをリセットし、透明で、再編可能で、国民と接続した予算構造へと進化させる必要がある。


最後に|“選べる未来”をつくるという国家戦略

  • 制度の死角(特別会計の繰り入れ控除後の資金の動き)を可視化せよ
  • 依存から自由へ、保障から支援へ
  • 未来を固定費で潰すな、柔軟性で切り拓け

「予算の自由がなければ、政策の自由もない」
この原則に立ち返るならば、国家は「特別会計の改革」からすべてを始めなければならない。

【補完記事】⇒「国債依存ではない」―構造シフト論が目指す本質

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