「税金は財源ではない」は誤解?国家財政の本当の仕組みを分かりやすく解説

はじめに:最近よく聞く「税金は財源ではない」という話

最近、「税金は財源ではない」「政府は通貨を発行できるから税金は必要ない」といった主張を目にすることが増えました。これは主に「現代貨幣理論(MMT)」という考え方に基づいたもので、一定の理論的裏付けはあります。

しかし、こうした議論にはしばしば誤解が含まれており、現実の国家財政とはズレがあります。

この記事では、税金と国債、そして通貨の供給の関係を丁寧に解説し、「税金は財源である」という事実を誰にでも分かるようにお伝えします。


前提知識1:政府の財源(歳入)はどうなっている?

まずは基礎から。

日本政府の主な歳入(お金の入り口)は以下の3つです:

  1. 税収(所得税、法人税、消費税など)
  2. 国債の発行(借金)
  3. その他収入(独立行政法人からの収益など)

中でも最も基本で重要なのが税収です。2024年度の税収は約78兆円。これは歳入全体の中核を成しています。


前提知識2:「国債」は財源のかさ増し手段

税収だけでは政府の支出が足りない場合、国債を発行してその不足分を補います。

  • 国債は「将来返済を約束してお金を借りる」仕組み
  • 投資家や銀行が購入し、政府にお金が入る
  • 一部の国債は日本銀行(日銀)が市場で買い取る

ここで重要なのは、**国債は税金の“代わり”ではなく、“補完的な財源”**という点です。


本題:「税金は財源じゃない」は誤解である理由

1. 国債の信用は「将来の税金」が支えている

国債は「将来必ず返す」ことが前提。その原資となるのが税金です。

税収がなければ、誰も安心して国債を買いません。つまり、税金は国債の信用の土台です。

2. 政府支出の初動には税収が必要

制度上、予算(支出計画)は税収を前提に編成されます。いくら通貨を発行できるとしても、制度的・法的には税金があってこその予算執行なのです。

3. 税金は通貨の信認を支える

私たちが円を使う理由の1つは、「税金が円でしか払えないから」。これは通貨への「需要」を生み出す要因でもあります。


補足:日銀が保有する国債と利息の関係

よくある疑問がこれ:

「じゃあ日銀が国債を買ってる分の利息はどうなってるの?」

確かに、政府が発行した国債を日銀が持っているなら、政府は日銀に利息(利払い)を払っていることになります。

しかし、ここで面白い構造があります。

日銀の利益は結局、政府に戻る

日銀が国債で得た利息などの「利益」は、経費や準備金を除いたうえで**政府に納付(=国庫納付金)**されます。

つまり、

政府 → 日銀(利息) → 政府(納付)

というループが形成され、実質的に政府による税金による利払いの一部は“政府に回収される”構造になっているのです。

ただし注意点

  • 日銀が保有していない国債の利息は、当然「外部」に支払われ、戻ってきません。
  • 国債の保有比率が日銀に偏ると、「財政ファイナンス」疑惑が生まれ、通貨の信認が揺らぐリスクも。

補足:国債=通貨供給の増加ではない

国債を発行したからといって、常に通貨が増えるわけではありません。

  • 市中銀行が購入 → 既存の資金移動 → 通貨量は変わらず
  • 日銀が購入 → 新たなマネー創出(量的緩和) → 通貨供給が増える

さらに、日銀が国債を償却すれば(帳簿上から消せば)、その分のマネーは恒久的に市場に残ります。

つまり、国債の発行や減却は、通貨供給と密接に関係しています。


結論:「税金は財源である」は制度的にも経済的にも事実

  • 税金は政府支出の中心的な財源
  • 国債は財源のかさ増し、補完手段
  • 日銀が保有する国債の利子の一部は、最終的に政府に戻る仕組み
  • 通貨の供給量は、国債と日銀のオペレーション次第で増減する

「政府はお金を刷れるから税金はいらない」という考えは、制度を無視した極論です。通貨の信認・国債の信用・財政運営の健全性を支えるのは、結局のところ税金という確かな土台なのです。

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