【提言】「内需中心国家」実現の鍵は“資本と人材の国内循環”構造にあり
はじめに:いま日本は「内需中心の国」とは言えない
日本政府や経済界はしばしば「内需主導の成長を目指す」と語りますが、その実態はまったく異なります。
人的資本・金融資本が国内から海外へと流出し続ける構造にある限り、日本は真の意味で「内需中心国家」とは呼べません。
問題の本質は、“国内で生まれた価値(資本・知識・人材)を国内で循環させる仕組み”が確立されていない点にあります。
本記事では、「なぜ今の日本が内需型経済と言えないのか」、そして「どうすれば“内向き循環構造”を再構築できるのか」を具体的に解説します。
日本が“内需型”に見えて実は外需依存な理由
【1】人的資本が海外へ流出している
- 優秀な若年層・研究者・技術者が、報酬やキャリア機会を求めて海外へ移住
- 海外大学・外資系企業・グローバル企業が日本人材を“輸出資源”として活用
【2】日本企業の利益の多くは海外で発生
- 大企業は生産・販売の主戦場をアジア・北米に移行
- 国内市場は縮小トレンドであり、設備投資も海外偏重
【3】日本の投資資本が国外資産へと集中
- 日本の年金、保険、金融機関などが海外株式・債券を中心に資金運用
- 国内投資はリターンと成長性の面で後回しにされる構造
本来の「内需国家」とは何か?
内需国家とは、単に国内消費が多い国ではありません。
真に内需型の経済とは、
- 国内で創出された資本と人材が、国内に投資され、再生産される仕組み
- 地方や中小企業にまで価値が循環し、持続的に成長できるエコシステム を有する国家のことです。
この前提を欠いたまま「内需主導成長」と唱えるのは、看板倒れの自己満足に過ぎません。
資本と人材を国内に循環させるための3つの戦略
【1】人的資本の国内定着強化
- 若年層への起業・研究支援ファンド創設(民間VCではなく国家主導)
- 「出戻り支援制度」の整備(海外人材の帰国支援と再雇用パス)
- 地方大学・研究機関への重点投資と、地元雇用の創出
【2】国内再投資を加速する税制と金融政策
- 海外投資偏重の企業に対して国内投資優遇税制を導入
- 地方発の新産業・中小企業向けの公的投資銀行の設置
- 金融機関に対し「国内融資率」の評価導入(ESGならぬ“DSI=Domestic Sustainability Index”)
【3】輸出志向から“国内需要志向”への産業構造転換
- 医療、介護、地域エネルギー、食、教育といった非輸出型産業への支援強化
- デジタルと地域密着型産業を組み合わせた「地産地消×高付加価値化」
- 「日本のために働く」「地域のために生きる」ことを誇れる社会ナラティブの構築
結論:「内需国家」への道は、“資本と人材の帰還”から始まる
いまの日本は、人的資本・金融資本の両面で国内から海外へと流れ出す構造を放置してきました。
このままでは、地方経済の衰退と都市部の空洞化が同時進行する“縮退国家”への道を辿るだけです。
内需型経済への転換とは、資本と人材を“国内から国内へ”循環させる構造改革に他なりません。
その実現には、既得権益や中央主導型の予算配分を乗り越える「静かな革命」が必要なのです。
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