【人間の欲望と制度の限界】なぜ既得権は“ちょうどいい規模”に抑えられないのか?

「利益が出る構造」を作った瞬間に始まる“肥大化”

どんな制度であっても、最初は“社会のため”“効率のため”という合理的な目的で設計されることがほとんどです。

しかしそこに*「利益の余地」=中抜きや既得権化の空間*が発生すると、それを活用しようとする人間の欲が動き始めます。

そして、その構造が一度*「儲かる仕組み」として認知されると、
それを守ろうとする勢力が現れ、膨張を始める*。


■ 欲望は“合理の境界”を越える

問題は、人間の欲には“上限”がないという点にあります。

  • 10得れば20欲しくなる
  • 一度手にした利権は、手放したくない
  • さらに「正当な報酬」だと信じ込み始める

これは、心理学で言う*「報酬の正当化バイアス」*です。
自分が得ている利益は当然、他人が得ている利益は不当と見なす。
その繰り返しが、経済循環の歪みを作り出していきます。


■ 既得権を“ちょうどよく保つ”ことは可能なのか?

理論的には、次のような仕組みが必要になります:

  • 利益の透明性を可視化し続ける制度
  • 循環性が閉じないよう、定期的な外部監査
  • 利権構造に外部者を混ぜる強制力

…しかし、実際にはこれらはほぼ機能しません。なぜか?

それは、仕組みを設計する側もまた、“欲を持った人間”だからです。


■ 「人が作る限り、欲は排除できない」

制度設計者や政策決定者自身が、
「自分がその恩恵を受けるかもしれない」ポジションにある時、
どれだけ“公正”や“倫理”を謳っても、無意識に甘くなる。

これは制度では防ぎきれない、“人間性”の問題です。
だからこそ、完全な公平性は設計不可能とも言えます。


■ 欲望は必ずルールを歪める:構造腐敗の公式

  1. 制度が生まれる(善意・目的志向)
  2. 利益が生まれる(中間マージン・裁量・情報格差)
  3. 既得権化が始まる(人脈・ポジション・天下り)
  4. 透明性が失われる(複雑化・専門化)
  5. 疑問が封じられる(権威・学歴・常識)
  6. 外部批判が「素人扱い」され、構造は温存される

このサイクルが繰り返され、制度は*「回すためのもの」ではなく「守るためのもの」へ変質*します。


■ まとめ:制度を歪めるのは「欲による非合理」

人間は利益を得れば、それを守ろうとし、
守ろうとすれば、構造を閉じていく。

つまり、既得権を“ちょうどいい規模”に保つためには、
人間が「欲を自制できる存在」でなければならない。

──だが、それは構造の設計ではなく、“倫理”や“教育”の領域。

ゆえに、制度に倫理を託すだけでは限界がある。
だからこそ、私たちは常に問い直し続ける必要があるのです。

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