なぜ“中抜き型の温存”は日本の内需を壊すのか?|小さな政府と経済合理性の視点から読み解く再建戦略
“支出しても経済が回らない”──それが、今の日本の根本的な病です。
いくら財政出動しても、インフラを建設しても、補助金をばら撒いても、内需が強くならないのはなぜか?本記事ではその核心にある、「中抜き構造の温存」と「維持費を無視した投資の暴走」が、どれほど日本経済を蝕んでいるか。そして、それに対抗する道筋として“小さな政府”の方向性と経済合理性”の重要性を徹底的に掘り下げます。
◆ はじめに:いま日本で起きている“支出と成果の乖離”
日本は巨額の財政支出を毎年行っています。しかし、それが民間の実需(=内需)や購買力に結びついていません。背景には2つの構造問題があります。
1. ❌「維持費無視のインフラ型支出」
- 道路・施設・ダム・箱モノなどの初期投資には莫大な資金を注ぎ込む
- しかし、維持管理コスト(ランニングコスト)に見合う予算は計画されず、老朽化・非効率化
- 最終的に、将来世代の負債として蓄積される
2. ❌「中抜き構造の温存」
- 官製補助金や委託事業が、中間団体やコンサル業界に集中
- 実際の現場(教育・医療・中小企業)には資金が届かない
段階 | 資金の流れ | 問題点 |
---|---|---|
① 予算決定 | 政府が支出計画を立案 | 対象が曖昧・政策目的が不明確 |
② 委託・請負 | 中間団体・外郭法人・コンサルが受託 | 実務なしで高額報酬が発生 |
③ 末端実行 | 実際の現場(企業・地域)に資金が届く | 届く金額が削られて少額に |
④ 効果の不透明性 | 経済成長や雇用に結びつかない | 成果検証が困難で、構造が温存される |
- 結果、支出してもGDPや消費には跳ね返ってこない
◆ 小さな政府とは「支出を減らす」ことではない
誤解されがちですが、「小さな政府」とは単に政府予算を削ることではありません。
“行政の機能をスリム化し、価値の最大化を図る”ことこそが本質です。
✅ 小さな政府の定義(合理的視点)
項目 | 説明 |
---|---|
機能の最小化 | 公共が担うべき範囲を限定(防衛・司法・基幹インフラなど) |
支出の最適化 | 中間コストを削減し、予算が直接現場に届く構造に |
自律経済の促進 | 民間と地域が主導する経済成長を促す政策設計 |
◆ 経済合理性で読み解く「維持費と投資」のバランスの崩壊
今の日本経済は、初期投資ばかりで、その後のメンテナンスや効果測定を軽視する傾向にあります。
▶ 例:補助金バラマキ型事業
- 一時的に「経済対策」として予算が降りる
- 短期間のプロジェクトに集中投資
- その後、雇用・供給能力・地域資源に残る価値は薄い
これは“使い切りの経済”であり、循環ではなく断絶の支出です。
💡 真に経済効果を生む支出は、「維持可能な価値」に変換されるものでなければならない。
◆ 中抜き型支出の最大の弊害:内需の破壊
中抜き型支出の特徴は、「最終消費者にお金が届かない」ことにあります。
❌ 中抜き構造の流れ(簡略)
- 政府が予算を組む
- 委託団体・コンサル・中間企業が事業を受託
- 現場の労働者・企業には少額しか届かない
- 消費に回らず、税収にもつながらない
◆ 結果:消費は弱く、円の需要も縮小する
- 可処分所得は上がらず
- 将来不安が増し、貯蓄性向が高まる
- 民間投資も縮小 → 内需がさらに弱まる
- 通貨(円)の信頼性も徐々に蝕まれる
◆ 対策:行政支出の「構造転換」と「原則の明文化」
✅ 投資支出の原則(5箇条)
- 中間経路は最短化すること
- 維持コストを見積もった上で投資すること
- 民間の成長を引き出す設計であること
- 成果が数値化・検証可能であること
- 3年以内に循環効果が可視化できること
原則 | 内容 |
---|---|
① 中間経路は最短化すること | 資金が直接現場に届く構造を前提とする |
② 維持コストも含めて設計すること | 一時的な投資で終わらず、将来の負担を見積もる |
③ 民間の成長を引き出すこと | 公的支出が民間の主体性や利益を引き出す設計に |
④ 成果を定量的に測定できること | 結果責任を持てる指標設計(KPIなど)があること |
⑤ 循環効果が3年以内に可視化されること | 短中期での税収増・雇用創出・成長の兆候が見えること |
これに沿っていない支出は、“政治的な分配”であって、“経済的な投資”ではないと判断すべきです。
◆ 結論:「予算規模の大小」ではなく、「流れの質」が国家を決める
大きな政府であっても、支出の流れが明快で、直接的な国民利益に結びつくなら意味がある。
しかし、日本の現状は“間接的で不透明な構造”に資金が吸収されすぎている。
✅ 本質的な改革とは、「構造の小型化」=中抜きを減らし、循環の密度を上げること
✅ 支出は削るのではなく、“価値に届く比率”を最大化すること
“見えない支出”が国力を蝕む
政治家も官僚も「予算を付けた」ことに達成感を持ちやすい。
だが、本当に重要なのは、そのお金が“誰に届き、何を生んだか”である。
中抜きと過剰な行政構造の温存は、“麻酔”のようにじわじわと内需と円の信用を奪っていく。
未来のための支出設計──それを問う時代が、もう来ています。
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